や16ぁ

やる気なんて初めから無かったんだなぁ

タッチ

期待はしていなかった。前々から聞いていた様に地方予選決勝で終わるらしいし、予告映像を見ても原作を壊しこそすれ、リスペクトするところなど皆無なのだろうと思っていた。実際、映画を見てみれば原作ファンならツッコみたくなるところが多い。
・上杉家と浅倉家の家の配置が逆。
・達也が中学時代に野球をやっていた。しかもちゃんとしたピッチャーだったっぽい。
・明青学園が「明青学園高校」となっており、どうやらエスカレーター式ではない。原作では中高一貫校
・制服が学ランセーラー服ではない。まぁこれは時代の流れか。しかし原田はそのコジャレた制服に下駄履きなのでものすごい違和感。
PS2で遊ぶシーンがあるが、達也の部屋にはセガサターンNINTENDO64の箱が映っていた。達也ゲーマー説。
・ボクシング部に女子マネージャーがいる。しかも達也に惚れる。
・原田に彼女がいる。しかもそれが若槻千夏若槻千夏は制服似合わねぇなぁ。水っぽすぎる。イメクラ嬢みたい。原田役のRIKIYAは、原作の原田が既に超高校級なので意外にハマッている。
・須見工の新田がなぜか左打者。しかもあまりカッコ良くない…。
設定だけでこれほどのツッコみどころがあるのだから本編は言わずもがな。かなりのクラッシャーぶりを堪能することができる。しかし、本作の見事なところは、破壊の限りを尽くすだけなのではなく、そこから全く新しいストーリーを構築しているところである。
「H2」は中途半端に原作のエピソードを入れたり原作無視のエピソードにしたりして失敗していたが、本作は「達也ボクシングの試合に負けて南からキス」、「和也の死」、「最終的に須見工に勝つ」という必須項目を満たせばあとはどうでも良いというくらいにストーリーを一から構築しているので、別の方向で面白さを出してしまっている。「タッチ」の映画化として考えると手放しで褒められないが、二次創作作品としてとらえれば結構見られる。ん?ということは、同人映画レベルということか?まぁいいや。
「H2」、「タッチ」とあだち充作品の実写版を見ていると、あだち充作品の完全な映像化は不可能なんだと思ってしまう。あの独特の間やあっさりしているけどあとからジワジワ余韻が来るラストなどは、マンガだからこそ表現できる手法なのかもしれない。あだち充映像化作品はホントにたくさんあるが、その中でもっともヒットしたと思われるアニメ版「タッチ」でさえも原作を忠実にアニメ化したとはとても言えない。その違いは原作に追いつきそうになったからとかそういう言い訳で済むレベルではない。アニメなり実写化なりするには、それ相応にマッチした演出、シナリオを作り直さなければならないのだ。マンガでしか表現できない演出という意味で、あだち充の演出手法は恐ろしい。
それでも「上杉達也浅倉南を愛してます。世界中の誰よりも」というセリフは映画版では不要だった。あのセリフは「タッチ」から完全に野球マンガの要素が消え失せた時だからこそシックリくるセリフなのに、野球の直後に言われても唐突なだけだ。そこは原作を守る必要はない。原作つきの作品なのに原作を守るなという物言いもなんか凄いな。